秘密国家ベックミン

ミリタリー関係の情報を発信していきたいと思います。

Flag out! フラググレネードのフラグってなんのこと? フラグメンテーションとコンカッションの違い

f:id:BeckminhGG:20190329154416j:plain

フラグアウト! フラグ投擲! フラグを投げるぞ!
ゲームや映画などで手榴弾を投げるときによく聞く台詞、格好良いですよね。
でもなんでわざわざあんなことを言うんだろう、特撮ヒーローの主人公でもないのに攻撃すること言う必要ってあるの? そもそも今まで普通にスルーしてきたけどフラグってなんなの? 死亡フラグのフラグ?
そういった疑問にお答えしたいと思います。




榴弾には色々種類がある


実はフラググレネードは手榴弾のなかの区分のひとつなんです。
例えるならカレーライス、一口にカレーライスといってもチキンカレーやビーフカレーなどたくさんの種類がありますよね。それと同じで手榴弾と一口にいっても性質がまったく異なる手榴弾があります。 それらの中で重要なものを二つ、ご紹介します。


フラグメンテーション・グレネード


f:id:BeckminhGG:20190329184403j:plain


ディフェンシブ・グレネードや防御手榴弾、破片手榴弾とも言われます。この名前を略したのがフラググレネードです。
榴弾に防御? 手榴弾って攻撃のために使うんでしょ? とお思いになるかもしれません。 確かにそれは事実です。
しかしこのフラグメンテーション・グレネード、効果範囲があまりにも広いのです。
フラグメンテーションの意味は分裂、つまり手榴弾の本体、弾殻が爆発したときに粉々に砕け散り、その破片が敵を傷つける、という意味です。
従って手榴弾を投げた際はその破片から身を守らなければならない。そういった意味で防御しなければならない手榴弾、防御手榴弾という名前になります。

フラグアウト! というのはつまり「今からフラグメンテーション・グレネードを投げるぞ、だから破片が当たらないように身を隠せ」という意味になるのです。格好付けではなく実は大事な意味だったんですね。


コンカッション・グレネード


f:id:BeckminhGG:20190329185548j:plain



こちらはうって変わって攻撃手榴弾、オフェンシブ・グレネード等とも呼ばれます。
フラグメンテーション・グレネードは破片で攻撃する手榴弾でしたが、こちらは爆風や衝撃波そのもので攻撃する手榴弾です。
衝撃波+破片では広範囲まで届く距離でしたが、衝撃波のみでは比較的範囲は小さいです。 従って破片などからは身を守る必要が少ないために攻撃手榴弾と呼ばれます。(もちろん危険じゃないというわけではなく、下手に近づいたら普通に体が吹き飛びます)
衝撃波は人間の器官に強力な影響を及ぼします。難聴などの五感に関するものだけでなく内臓にも大きな影響を与え、大きなショックを与えます。当然、死亡するか、もし生き残っても身動きは取れません。

他にも水中では水の抵抗で弱まりやすい破片よりも衝撃波の方が優秀なため、水中から潜入してくる工作部隊対策などにも使われることがあります。もし無人島に遭難したりしたらコンカッション・グレネードで漁が出来るかもしれませんね。


両用出来るマルチな手榴弾

中にはフラグメンテーション・グレネードとコンカッション・グレネードを組み替えで使い分けることが出来る優れものがあります。
その中の1つが西ドイツが設計したDM51。

f:id:BeckminhGG:20190329191402j:plain

一見なんの変哲もない手榴弾のように見えますが、なんとフラグメンテーション・グレネードにコンカッション・グレネードの弾殻を装着している設計になっています。

f:id:BeckminhGG:20190329194402p:plain

これらは付け外しが出来ます。非常に便利な手榴弾と言えますね。
ドイツは第二次世界大戦の頃からコンカッション・グレネードをフラグメンテーション・グレネードにすることが出来るキットなどを開発していたので、ドイツの十八番なのかもしれません。



余談 お隣の中国の制式名

余談ですが、初期の中国人民解放軍は明確に、わかりやすくこの二つを分類していました。

例として

防-1式手榴弹(ソ連のF1型手榴弾)

f:id:BeckminhGG:20190329194426j:plain

名前から直球で「あぁ、防御手榴弾(フラグメンテーション・グレネード)なんだなぁ」とわかりますよね。 まさにシンプルイズベスト、って感じです。

攻-59式手榴弹(ソ連のRGD-5型手榴弾)


f:id:BeckminhGG:20190329193303j:plain

こちらも名前で「あぁ、コンカッション・グレネードなんだな……」となりますよね。
しかし中国のお隣、ソ連ではこのRGD-5型は対称的にフラグメンテーション・グレネードとして扱われていたそうです。
なぜこんな微妙な差が? それは1950年代の中ソ対立の影響で中国はRGD-5の破片拡散能力を向上させることが厳しかった世知辛い事情があったようです。
フラグメンテーションとしての機能がイマイチだったらいっそのことコンカッションとして分類してしまえ、となったのかもしれませんね。

この分類法はある時期から使われなくなったようですが、非常に分かりやすいので個人的に好きなやり方です。

といったように手榴弾一つでも様々な種類や各国の思想や技術が詰まっています。
普段ゲームで投げている手榴弾、その一つ一つを調べてみるのも面白そうですね。