すっごーい! きみは拳銃のフレンズなんだね! 中東からやって来たカラカル・ピストル
カラカル、食肉目ネコ科カラカル族の赤い毛並みを持つほっそりとしていて愛らしい動物…… 某アニメにも擬人化して登場したことで更に知名度が上がっています。
そんなミリタリーとはさほど関係無さそうなカラカルの名前が最近、銃器マニアの間でじわじわと知られてきています。なぜでしょうか?
File:Caracal F pistol.jpg by Francis Flinch is licensed under CC BY-SA 3.0
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Caracal_F_pistol.jpg
それはアラブ首長国連邦、UAEの銃器メーカー カラカル・インターナショナル L.L.Cが近年兵器の売り上げを伸ばしており、特に世界でも五本の指に入るほどの規模の軍事力を誇るインド軍からアサルトライフルの大量受注を受けたことで注目を集めているからなのです。
今回はそんなカラカル社の拳銃、カラカル・ピストルについてのお話です。
血はオーストリア? 名銃の宝庫からやって来た銃器デザイナー
カラカル・ピストルはオーストリアの銃器デザイナー、Wilhelm Bubits氏が主導で設計した自動拳銃です。
Wilhelm Bubits氏はグロック社、ステアー・マンリッヒャー社に在籍していた経歴を持ち、ステアー・マンリッヒャー社ではステアーMシリーズという拳銃の開発プロジェクトにも参加していました。
ステアーMシリーズはジョージアなどの一部の国の特殊部隊が採用しており、現在も改良が続けられています。
開発者が同じだけあってカラカル・ピストルもそのステアーMシリーズの影響を強く受けていると感じる設計が見受けられます。
ステアーMシリーズのうちのひとつ、ステアーM9
イマドキの流行り? 撃鉄がないストライカー式
カラカル・ピストルはストライカー式と呼ばれる機構を採用しています。
これまで一般的だった撃鉄を使用する物はハンマー式と呼ばれ、グリップの内部などに仕込まれたバネで撃鉄を動かし、撃鉄が銃の内部にある撃針という部品を叩いて前に押し出し、弾を撃発させます。
それに対してストライカー式は外に露出する撃鉄を使わず、中身の撃針(この方式の場合はストライカーと呼ばれる)を直接バネで押し出し、撃発させる仕組みです。
どう違うのか? 簡単に言えばストライカー式は信頼性が向上します。
ハンマー式では撃鉄が砂などの異物を噛んでしまって上手く撃針を叩けずに撃発させられない、といったことが起こる可能性があります。
その点、ストライカー式はメカニズムが内部に収まっているので異物が入りにくくなり、信頼性が上がるというわけですね。
もちろんハンマー式にはハンマー式の良い点があるので単純な比較は出来ませんが、近年の軍用拳銃はこのストライカー式を採用する例が増えてきています。
まず、一番有名なのはグロック17。
他にもシグザウエルP320、スミス&ウェッソン M&P、ベレッタAPX、ヘッケラー&コッホ VP9、Cz P-10C…… 現在、様々な銃器メーカーがストライカー式拳銃を生産しています。
そして何を隠そうWilhelm Bubits氏が開発に参加していたステアーMシリーズもストライカー式でした。カラカル・ピストルがストライカー式になるのは時代と血筋による運命だったのではないでしょうか。
ハンマー式を採用している米軍のベレッタM9拳銃。非常に有名な名銃だが今後はストライカー式のシグザウエルM17拳銃に更新されていく予定。
輸出されるカラカル・ピストル
出展:MENA Defense
Première image du Caracal Made in Algeria - MENADEFENSE
UAEはもちろんその周辺のバーレーンやヨルダンなどもカラカル・ピストルの採用を開始しています。先にあげたストライカー式の信頼性は砂の多い中東では役に立つこと間違いないでしょう。
中東から出てみると、リビアなどに輸出も成功しており、アルジェリアでは国内生産が始まっています。
将来的にも明るいと言えるのではないでしょうか。
現行モデル カラカル・エンハンスド・ピストル
出展:Caracal USA 公式サイトENHANCED F PISTOL | CARACAL USA
初期モデルだったカラカル・ピストルは安全性に難があったため、カラカル社は安全面などで既存のカラカル・ピストルに改良を施しました。
それがカラカル・エンハンスド・ピストル。
アメリカ市場ではすでに販売されており、好評価を得られているようです。
もし人気が出ればどこかのエアソフトガンメーカーがカラカル・エンハンスド・ピストルのモデルを作ってくださるかもしれませんね。ぜひ期待したいところです。
中東からやってきた期待の新星カラカル・インターナショナル・L.L.Cとその尖兵カラカル・ピストル。今後はメディア露出が増え、日本でもメジャーな存在となるかもしれません。